眠れない夜が続き、気分まで沈んでくる。

最近ずっと眠れなくて、何をしても楽しくない…。これってうつ病なのかな。
眠れないことと気分の落ち込みが重なると、「自分はどうなってしまうのだろう」と不安になりますよね。
結論から言うと、うつ病と不眠は深く関係していて、うつ病では寝つけない、夜中や朝早くに目が覚めるといった眠りの不調がよくみられます。反対に、眠りすぎてしまうこともあります。
まずは、次の3つを意識してみてください。
- 眠れないことで、自分を責めない
- 朝は決まった時刻に起きて、光を浴びる
- 気分の落ち込みや興味の低下が続くなら、早めに相談する
眠れないうえに、気分の落ち込みや、何をしても楽しめない状態が続くときは、うつ病の可能性もあるため、早めに精神科・心療内科に相談を。うつ病の治療とあわせて、眠りの不調にも対処していくことができます。


医療法人社団一秀会 理事長
葛飾橋病院 院長
尾内 隆志
よりよい医療を提供し、地域に信頼される病院を目指していきます。
大口病院は、1954年に開設され、伊佐地区唯一の精神科医療機関として心の病を抱える方々の治療に従事してまいりました。
地域の皆さまにとってかかりつけの精神科病院となるべく、認知症、統合失調症、気分障害、発達障害など多様化した心の不調にあたるのに加え、近年は行政や関係機関と連携して地域の子どもから高齢者までのメンタルヘルス課題に対応するシステム作りにも取り組んでいます。
大口病院は、医療法人社団一秀会 葛飾橋病院が運営する医院の一つです。
葛飾橋病院は、地域の皆様や多くの病院の方々にご協力をいただき、半世紀をこえる歴史を重ねている医院です。
その間に社会環境、生活スタイルの変化など世の中も大きく変わり、それにともない精神医療分野も大きく変化し、今や患者様やご家族のご希望も変化・バリエーションが増えております。
これからも地域の皆さまと共に優しく開かれた医療をめざしていきます。
資格
- 精神保健指定医
- 認定精神科医
- 日本精神神経学会専門医
- 日本医師会認定産業医
- 日本医師会会員
- 日本精神科病院協会 会員
- 東京精神科病院協会 会員
- 東京都病院協会 会員
- ル・ソラリオン葛飾非常勤(嘱託)医師
専門分野
- 臨床精神科医学一般
うつ病と不眠の関係


うつ病では、一日中気分が落ち込む、何をしても楽しめないといったこころの症状が現れます。あわせて、眠れない、食欲がない、疲れやすいといった体の症状もみられます。
不眠はうつ病のサインの一つ
「ただの不眠だと思っていたら、実はうつ病だった」ということも少なくありません。
眠れないうえに、気分が落ち込む、何をするのも億劫、趣味が手につかないといった状態が重なるときは、早めに専門医を受診しましょう。
眠れない日が続くことが、こころの不調につながることも
うつ病などのこころの病気では、かかりはじめの時期から眠りの問題が現れることがあります。厚生労働省の睡眠ガイドでも、眠りの問題が症状のぶり返しや再発のリスクを高めることが示されています。
また、眠れない状態そのものが、こころの病気にかかるリスクを高める可能性もあります。
うつ病と不眠は、お互いに影響しあう関係にあるのです。



眠れないことは、うつ病の早い段階から現れやすい症状の一つです。「眠れないだけだから」と我慢せず、気分の変化にも目を向けてみてください。眠りのことをきっかけに相談していただいて構いません。
うつ病でみられる眠りの特徴


うつ病では、次のような眠りの不調が現れることがあります。
| 眠りの不調 | 具体的な様子 |
|---|---|
| 寝つけない(入眠障害) | 布団に入っても、なかなか眠れない |
| 夜中に目が覚める(中途覚醒) | 夜中に何度も目が覚め、そのあと寝つけない |
| 朝早く目が覚める(早朝覚醒) | 予定より早く目が覚め、二度寝ができない |
| ぐっすり眠れた感じがない | 眠りが浅く、寝ても疲れがとれない |
| 眠りすぎる(過眠) | 朝起きられない、一日中眠ってしまう |
なかでも朝早く目が覚める「早朝覚醒」は、昔からうつ病に特徴的な症状として知られています。
また、うつ病では深い眠りが出にくくなることもわかっています。
※これらの症状があるからといって、うつ病とは限りません。夜中に何度も目が覚める原因については、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:中途覚醒の原因|再入眠の方法や受診の目安
眠りすぎる(過眠)こともある


うつ病では、眠れないだけでなく、反対に眠りすぎてしまうこともあります。
厚生労働省の睡眠ガイドでも、うつ病などのこころの病気には、不眠や過眠が高い確率でともなうことが示されています。眠っても休めた感じが得られにくい状態が、長く続くこともあります。
眠りすぎも、眠れないことと同じく、体に現れるうつ病のサインの一つです。
「朝どうしても起きられない」「休日は一日中寝てしまう」という状態は、怠けではなく、こころの不調のサインである可能性があります。
なお、うつ状態と気分が高ぶる状態(躁状態)をくり返す双極性障害でも、うつの時期に眠りすぎることがあります。うつ病と双極性障害では治療法が大きく異なるため、専門家による見極めが必要です。
不眠と一緒にこんなサインがあれば要注意


眠れないことに加えて、次のようなサインがみられる場合は、うつ病の可能性も考えましょう。
| 分類 | サインの例 |
|---|---|
| こころのサイン | 一日中気分が落ち込む、何をしても楽しめない、悪いほうにばかり考えてしまう、イライラや焦りが強い |
| 体のサイン | 食欲がない、体がだるい・疲れやすい、頭痛や肩こり、動悸、胃の不快感、めまい |
| 周りから見てわかるサイン | 表情が暗い、自分を責めてばかりいる、涙もろくなった、反応が遅い、落ち着かない、お酒の量が増える |
※国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」をもとに作成
気分が落ち込むような、はっきりした原因が思い当たらないことも少なくありません。
また、うつ状態では物事の捉え方が否定的になりやすく、「自分はダメな人間だ」と感じてしまうこともあります。
眠れないことだけで、うつ病かどうかを判断することはできません。気になるサインがあるときは、自己判断せず、専門家に相談しましょう。
うつ病の不眠の治療


うつ病の治療では、まず心身をしっかり休められる環境を整えることが大切です。
うつ病の主な治療法
| 治療 | 内容 |
|---|---|
| 休養 | 職場や学校を休むなど、ストレスから離れて休める環境を整える |
| 薬物療法 | 主に抗うつ薬を使う。症状に応じて、睡眠薬などを一緒に使うこともある |
| 精神療法 | 専門家との対話を通して進める治療。認知行動療法などもある |
| 運動療法 | 散歩などの軽い有酸素運動で、うつ症状が軽くなることがある |
薬は自己判断で増やしたり、やめたりしない
抗うつ薬は、飲み始めてすぐに効くわけではありません。続けて飲むことが必要です。
自分の判断で薬の量を増やしたり、減らしたり、やめたりせず、主治医の指示に従って続けることが大切です。
睡眠薬に不安を感じる人もいるでしょう。厚生労働省のe-ヘルスネットでも、今使われている睡眠薬は、正しく飲めば過度な心配はいらないと説明されています。
ただし、長い間なんとなく飲み続けるのは避け、医師の指導のもとで正しく使いましょう。



うつ病の治療中でも、眠れない夜が続くことがあります。薬が合っていないと感じたり、眠れずにつらいときは、我慢せずに主治医に伝えてください。眠りの状態を伝えていただくことは、治療を調整するうえでも大切な情報になります。
眠れないときに自分でできること


治療とあわせて、生活の中でできる工夫もあります。無理のない範囲で取り入れてみてください。
生活の中で取り入れたい工夫
- 朝は決まった時刻に起きて、光を浴びる:体内時計が整い、夜に眠気が来やすくなります。
- 日中に少し体を動かす:散歩などの軽い運動から始めてみましょう。
- 眠くなってから布団に入る:眠れないのに長く布団にいると、かえって眠れなくなることがあります。眠れないときは、いったん寝床を離れても構いません。
- 寝る前はスマホを控え、照明を落とす:明るい光は、眠りを促すホルモン(メラトニン)の分泌を妨げます。
- 眠れないことを一人で抱え込まない:一人でくよくよ考え込むと、不眠が悪化するだけでなく、こころにも悪い影響が出ることがあります。
避けたいこと
- お酒の力で眠ろうとする:寝つきがよくなったように感じても、夜中に目が覚めやすくなり、眠りの質が下がります。
- 自己判断で薬をやめたり、増やしたりする:症状が悪くなることがあります。必ず主治医に相談しましょう。
- 眠れないのに長く布団にいつづける:「眠れない」という焦りが強まり、不眠が悪化しやすくなります。
- 昼過ぎまで寝る、夕方に長く昼寝をする:昼夜のリズムが乱れ、夜に眠りにくくなることがあります。
関連記事:いろいろ考えすぎて眠れない時の対処法|今夜できることと受診の目安
家族や周りの人ができること


うつ病では、本人が自分の変化に気づきにくいこともあります。家族や周りの人が「いつもと違う」と気づくことが、早めの相談につながります。
- 変化に気づく:表情が暗い、自分を責めてばかりいる、反応が遅い、お酒の量が増えたなどの変化に気を配りましょう。
- 話をじっくり聞く:本人の気持ちを否定せずに受け止めましょう。
- 休める環境を整える:家事や仕事の負担を減らし、しっかり休めるようにします。
- 受診をすすめる:本人が一人で受診しにくい場合は、付き添うのも一つの方法です。
本人が「消えてしまいたい」「死にたい」と口にしたときは、一人にせず、すぐに医療機関や相談窓口に相談してください。
受診の目安と相談先


受診を考えたい目安
次のような場合は、期間にかかわらず、早めに医療機関に相談してください。
- 眠れない状態とともに、気分の落ち込みや興味の低下が続いている
- 眠れないことで、仕事や家事、勉強に支障が出ている
- 朝早く目が覚め、そのあと気分が沈んだまま過ごしている
- うつ病の治療中だが、眠れない状態が続いてつらい
- 「消えてしまいたい」と感じることがある
何科に相談すればいい?
国立精神・神経医療研究センターも、うつ病かなと思ったら自己判断せず、精神科や心療内科に相談するようすすめています。
かかりつけの内科などの医師に相談したり、保健所や精神保健福祉センターの相談窓口を利用したりすることもできます。
受診の際は、次のことをメモしておくと、状況が伝わりやすくなります。
- 眠れない状態がいつごろから続いているか
- 寝つき・夜中の目覚め・朝の目覚めの様子
- 気分の落ち込みや、興味・食欲の変化
- 仕事や家事、学校への影響
- 飲んでいる薬や、お酒の量



「眠れない」という悩みの背景に、こころの不調が隠れていることもあります。うつ病は、早めに相談して休養と治療を始めることが大切な病気です。つらいときは、一人で抱え込まずに相談してください。
「消えてしまいたい」「死にたい」と感じるほどつらいときは、一人で抱え込まず、すぐに相談してください。
- #いのちSOS:0120-061-338(無料・24時間365日)
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(通話料がかかります。受付の曜日・時間は都道府県によって異なります)
今すぐ自分を傷つけてしまいそうなときは、119番に連絡してください。
よくある質問


まとめ


うつ病と不眠は深く関係していて、眠れない、夜中や朝早くに目が覚める、反対に眠りすぎるといった眠りの不調がみられることがあります。
- 眠れないことで、自分を責めない
- 朝は決まった時刻に起きて、光を浴びる
- 気分の落ち込みや興味の低下が続くなら、早めに相談する
眠れない状態に加えて、気分の落ち込みや、何をしても楽しめない状態が続くときは、一人で抱え込まず、精神科・心療内科に相談してください。
大口病院でも、眠れない悩みや心の不調についてのご相談をお受けしています。
参考資料
- 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」うつ病 https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-001.html
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「眠りのメカニズム」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-002.html
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(睡眠対策) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
- 北九州市 いのちとこころの情報サイト「『うつ病』と睡眠」 https://www.ktq-kokoro.jp/lecture/4414
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」 https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/






