鏡の前から、なかなか離れられない。写真を撮っては、何度も撮り直してしまう。

周りからは「気にしすぎ」と言われるけれど、自分には確かに見えている。
醜形恐怖症は「しゅうけいきょうふしょう」と読みます。
自分の見た目の一部が気になって頭から離れない。この状態は、気にしすぎや自意識過剰ではありません。外見へのとらわれ(考えが外見から離れなくなること)で苦痛が続き、生活に支障が出ているなら、治療の対象になる状態です。
読み進めると、次の3つがはっきりします。
- いまの自分の状態を確かめる方法
- ネット上の「診断テスト」と、医療機関の診断は何が違うか
- どう治していくのか、何科に相談すればよいか


医療法人社団一秀会 理事長
葛飾橋病院 院長
尾内 隆志
よりよい医療を提供し、地域に信頼される病院を目指していきます。
大口病院は、1954年に開設され、伊佐地区唯一の精神科医療機関として心の病を抱える方々の治療に従事してまいりました。
地域の皆さまにとってかかりつけの精神科病院となるべく、認知症、統合失調症、気分障害、発達障害など多様化した心の不調にあたるのに加え、近年は行政や関係機関と連携して地域の子どもから高齢者までのメンタルヘルス課題に対応するシステム作りにも取り組んでいます。
大口病院は、医療法人社団一秀会 葛飾橋病院が運営する医院の一つです。
葛飾橋病院は、地域の皆様や多くの病院の方々にご協力をいただき、半世紀をこえる歴史を重ねている医院です。
その間に社会環境、生活スタイルの変化など世の中も大きく変わり、それにともない精神医療分野も大きく変化し、今や患者様やご家族のご希望も変化・バリエーションが増えております。
これからも地域の皆さまと共に優しく開かれた医療をめざしていきます。
資格
- 精神保健指定医
- 認定精神科医
- 日本精神神経学会専門医
- 日本医師会認定産業医
- 日本医師会会員
- 日本精神科病院協会 会員
- 東京精神科病院協会 会員
- 東京都病院協会 会員
- ル・ソラリオン葛飾非常勤(嘱託)医師
専門分野
- 臨床精神科医学一般
醜形恐怖症のセルフチェック


当てはまる数で病気が決まるわけではありません。いま困っているかどうか、生活に支障が出ているかどうかが、いちばんの目安になります。
下のチェックは、自分の状態を言葉にするためのものです。選ぶと結果が出ます。気持ちがつらくなったときは、途中でやめてください。
✓醜形恐怖症のセルフチェック
これは診断ではありません。自分の状態を言葉にするためのチェックです。当てはまるものを選ぶと、下に結果が出ます。以前のことでも、いまも影響があるなら選んで構いません。つらくなったら途中でやめてください。選んだ内容がどこかに送信されることはありません。
選んだ項目:0/16
※この結果は診断ではありません。受診するかどうかは、ご自身で決めて構いません。
結果に出た内容は、受診のときにそのまま伝えて構いません。「どの部分が、いつから、どれくらい気になっているか」を伝えられると、最初の診察が進みやすくなります。
醜形恐怖症の「診断テスト」はある?


ネット上の「診断テスト」で醜形恐怖症が決まることはありません。 無料の診断テストもたくさんありますが、それは医療機関が行う診断とは別のものです。
血液検査やレントゲンのように、数値で白黒がつく病気ではありません。そのため、診察では話をうかがって判断します。
医療機関ではどう判断するのか
医師は、次の3つがそろっているかを見ます。
- 他の人から見るとささいな、あるいは他の人の目には触れない部分の欠点にとらわれている
- そのとらわれから、繰り返しの行動が出ている(鏡で確認する、過剰に身だしなみを整える、人と見くらべる、など)
- そのために強い苦痛を感じているか、職場・家庭・友人関係などで生活に支障が出ている
点数ではなく、この3つがそろっているかで見ていきます。
難しいのは、醜形恐怖症の方の多くが、自分の外見は実際には問題ないということに気づきにくい点です。「自分には確かに欠点がある」と本当に感じているため、本人の実感だけでは判断がつきません。
だから診察では、見た目そのものではなく、その考えに費やしている時間と、そのせいで起きていることをうかがいます。
診断テストとセルフチェックは何が違うか
| 何のためのもの | これだけでは決められないこと | |
|---|---|---|
| ネットの診断テスト | 点数をつけて目安を出す | 本人の苦痛の大きさ、生活への支障 |
| この記事のセルフチェック | 自分の状態を言葉にする | 診断名 |
| 医療機関の診察 | 診断と、これからの治療 | — |
セルフチェックは、診断の代わりではなく、受診の準備として使うものです。



「何点以上なら病気ですか」と聞かれることがあります。この状態には、そういう線引きがありません。迷っているなら、迷っていること自体を話しに来てください。
醜形恐怖症とは?正式な病名と「気にしすぎ」との違い


醜形恐怖症とは、実際には存在しないか、あってもささいな外見上の欠点にとらわれ、強い苦痛や生活への支障が出ている状態です。
特徴的なのは、本人には本当にそう見えていることです。周りから「気にならないよ」と言われても、納得できません。
身体醜形症・身体醜形障害との関係
「醜形恐怖症」は通称で、医療の現場では身体醜形症(身体醜形障害)と呼ばれます。
分類としては、強迫症(強迫性障害)と近い仲間に入ります。
強迫症は、頭から離れない考えと、それを打ち消すための繰り返しの行動が止まらなくなる病気です。戸締まりを何度も確認してしまう、といった形で知られています。
醜形恐怖症も、外見のことが頭から離れず、確認や身だしなみを整える行動を繰り返すという点で、よく似た形をしています。
実際、どちらの治療にも抗うつ薬と認知行動療法が使われます。ただし醜形恐怖症の認知行動療法は、この状態の症状に合わせた形で行われます。
摂食障害との見分け
悩みが体型と体重に集中していて、食べ方の乱れも出ている場合は、摂食障害(食べ方や体重のコントロールに大きな問題が出る状態)のほうが近いことがあります。
鼻の形、肌、髪など体型以外の部分にとらわれているときは、身体醜形症として扱われます。体が十分に大きくない、筋肉が足りないという心配が中心の場合も、身体醜形症のひとつのタイプで、筋肉醜形恐怖症と呼ばれています。
どちらとも言い切れない場合もあります。気になっている部分と、食事の様子の両方を医師に伝えてください。
「気にしすぎ」との境目
誰にでも、鏡を見て気が沈む日はあります。見るところは次の3つです。
| 見るところ | ふつうの「気になる」 | 相談を考えてよい状態 |
|---|---|---|
| 考えている時間 | ときどき思い出す程度 | 毎日何時間も頭から離れない |
| 行動 | 身支度をして終わる | 確認や隠す行動がやめられない |
| 生活 | 予定どおり動ける | 休んだ、断った、約束に遅れた |
「自分は気にしすぎなだけ」と思って、何年も相談せずにいる方は少なくありません。 恥ずかしくて言い出せない人や、本当に自分は醜いと信じている人は、長い間診断されないことがあります。
醜形恐怖症の症状と行動のパターン


気持ちの中だけで起きているわけではありません。外から見てわかる行動として出てきます。
| よく見られる行動 | そのときの気持ち |
|---|---|
| 鏡や画面で何度も確認する | 確かめないと落ち着かない |
| 逆に、鏡をいっさい見ない | 見たら一日が終わってしまう |
| 人の外見と自分を見くらべる | 自分だけがおかしい気がする |
| 髪や服、顔の向きで隠す | 見られたくない |
| 「変じゃない?」と繰り返したずねる | 大丈夫と言ってほしい |
| 肌をいじる | 気になるところを直したい |
多くの方は鏡で何度も確認します。 逆に、いっさい鏡を見ないという方もいます。時期によって交互に出る方もいます。
気になる部分として多いのは顔や頭まわりです。薄毛、にきび、しわ、傷あと、肌の色、顔や体の毛の多さなど。鼻、目、耳、口、胸、脚などの形や大きさが対象になることもあります。
悩む部分が途中で変わることもあり、ひとつとは限りません。
症状の出かたも人によって違います。少しずつ強くなっていくこともあれば、ある時期から急に出てくることもあります。 強さも一定ではなく、楽な時期とつらい時期を行き来します。
ただし、治療をしないままでいると長引きやすいことが知られています。「そのうち気にならなくなるはず」と待つより、困っている時点で相談するほうが取り組みやすくなります。
「Zoom醜形恐怖症」「皮膚醜形恐怖症」といった言葉を見かけることがありますが、これらは医学的な診断名ではありません。
醜形恐怖症はどんな人に起こる?


性格が弱いから、気が小さいからなるわけではありません。
始まりやすい時期
多くは青年期に始まるとされています。おおむね10代から20代前半にあたる時期です。
男性より女性にやや多くみられますが、男性にも起こります。
原因ははっきり分かっていない
なぜ起こるのかは、まだはっきり分かっていません。
近い仲間である強迫症では、性格・生育歴・ストレス・感染症など、多様な要因が関係していると考えられています。1つの原因で説明できるものではありません。
きっかけを思い出せる方も、思い当たらない方もいます。原因がはっきりしなくても治療は進められます。「理由が分からないから相談できない」とは考えないでください。
見た目が整っていても起こる
実際には欠点がまったくないか、あってもささいなものであるにもかかわらず、本人は大きな欠点があると感じています。
つまり、外から見て整っているかどうかは、この状態と関係がありません。「美人なら、イケメンなら無縁」ということはありません。



ご自分では「考えすぎなだけ」とおっしゃる方もいます。考えている時間を一緒に数えてみると、ご本人が驚かれることがあります。
醜形恐怖症の治し方


治療には抗うつ薬と認知行動療法が使われます。症状に応じて、片方または両方を組み合わせて進めます。
薬による治療
使われるのはSSRIと呼ばれる薬や、クロミプラミンという薬です。
どちらも脳内のセロトニンに働く抗うつ薬で、うつ病の薬として知られています。
量は症状に合わせて医師が調整します。すぐに効くものではありません。
薬を使うかどうか、どの薬を選ぶかは、診察のうえで決まります。 保険が使えるかどうかも、あわせて確認してください。
市販薬やサプリメントで対応するものではありません。 自己判断で量を増やしたり、効かないと感じて急にやめたりせず、医師と相談しながら進めてください。
認知行動療法
自分の見た目について、より正確で現実に近い考え方ができるように進めていく治療です。
あわせて、鏡での確認や肌をいじるといった繰り返しの行動を減らしていきます。鏡を見る回数や時間をあらかじめ決める、隠すために使っているものを少しずつ減らす、人にたずねるのをやめてみる、といった形です。
いきなり全部ではなく、取り組みやすいところから順に決めていきます。
やめると最初は落ち着きません。治療は、その落ち着かなさが弱まり、確認しなくても済む状態を目指して進めます。
人と関わる場面に戻っていけるよう支えることも、治療に含まれます。
重い場合は、薬と認知行動療法を組み合わせるのがよいと考えられています。
よくなるまでの道のりには個人差があります。 どれくらいかかりそうかは、診察のなかで医師が伝えます。
美容医療で解決しにくいのはなぜか
気になる部分を変えれば終わる、と考えるのは自然なことです。実際、醜形恐怖症の方の多くが皮膚科・歯科・美容外科などで施術を受けています。
ただし、醜形恐怖症のとらわれが背景にある場合は、期待した結果を得られないことが多く、かえって思い込みが強まってしまうこともあると報告されています。そのため、この状態に対する治療として美容外科手術はすすめられていません。
美容医療そのものを否定するものではありません。 実際に皮膚の治療が必要かどうかは、皮膚科で相談できます。とらわれが強いときに、施術を決める前にこころの側から相談する道もある、ということです。
次の3つは、その場はしのげても、治療ではやめていくことを目指す行動です。
- 納得いくまで鏡で確認する
- 「変じゃない?」と繰り返したずねる
- 満足できないまま施術を重ねる
病院に相談する目安と何科に行くか


期間の長さにかかわらず、生活に支障が出ているなら相談して構いません。
次のどれかに当てはまるなら、精神科・心療内科へ相談してください。
- 見た目が気になって仕事や学校を休んだ
- 人と会う予定を断ることが増えた
- 外出が夜だけになってきた
- 施術を受けても満足できない状態が続いている
精神科と心療内科のどちらでも相談できます。
おおまかには、こころの症状を幅広く診るのが精神科、体の症状としてあらわれる不調も含めて診るのが心療内科です。ただし重なる部分が多く、どちらに行っても構いません。
迷うときは、かかりつけ医に相談してください。
人前に出るのを避けるうちに、仕事や学校、人づきあいから離れていくことがあります。重い場合には、夜しか外出しなくなったり、ほとんど外に出られなくなったりすることもあります。
- どの部分が、いつから気になっているか
- 一日にどれくらいの時間、そのことを考えているか
- やめられない行動(確認する・隠す・たずねる)
- 断った予定、行けなかった場所



「こんなことで病院に行ってよいのか」とためらって、何年も我慢されていた方もいらっしゃいます。見た目のことは人に話しにくい分、相談が遅れやすいのだと思います。困っている時点で、十分な相談の理由です。
醜形恐怖症では、気分の落ち込みが重なったり、つらさをしのぐためにお酒や薬に頼ったりすることがあります。見た目のこと以外にも困りごとがあれば、あわせて伝えてください。
つらさが強まることもありますが、治療によって良くなることが期待できる状態です。 一人で抱え込まないでください。
「消えてしまいたい」「死にたい」と感じるほどつらいときは、一人で抱え込まず、すぐに相談してください。
- #いのちSOS:0120-061-338(無料・24時間365日)
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(通話料がかかります。受付の曜日・時間は都道府県によって異なります)
今すぐ自分を傷つけてしまいそうなときは、119番に連絡してください。
よくある質問


まとめ


見た目の一部が気になって離れないのは、気にしすぎや性格の問題ではありません。身体醜形症として扱われ、治療の対象になります。
施術で見た目を変えても、とらわれが残っていれば次の部分が気になることがあります。
- 当てはまる数ではなく、生活に支障が出ているかで考える
- ネットの診断テストでは決まらない。話をうかがって判断する
- 施術を決める前に、精神科・心療内科で相談する道もある
人前での食事に強い不安が出る会食恐怖症も、不安から場面を避けるという点で似た構造があります。
大口病院でも、こころの不調についてのご相談をお受けしています。
参考資料
- MSDマニュアル家庭版「身体醜形症」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/10-心の健康問題/強迫神経症および関連障害/身体醜形症
- 国立精神・神経医療研究センター こころの情報サイト「強迫性障害」 https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=MiyHEH6ZUZDxDeYX
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」 https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/









